ファインブランキング縦順送加工とは(前編)
1,序論
縦順送加工とは、2000年頃より使われ始めた比較的新しい用語です。ファインブランキング(以降FB)では縦順送加工という用語が使われる以前から、FBプレスの特徴を生かし、縦方向に順次加工する部品が数多く生産されていました。本稿では、FB縦順送加工の仕組みと代表的事例について解説します。
2,縦順送加工とは
縦順送加工は、通常の順送プレス加工で避けられないピッチエラーを抑えるため、1工程でそれぞれの加工を縦方向に順次加工する工法です。
メリットは以下の通りです。
- 同芯度、真円度、ピッチ精度が良い
- 絞りや、段差部の形状合わせ不良がない
- 外郭部、内郭部を同時加工するため形状変形が少ない
3,FBで縦順送加工をするには
独立して制御可能な3動の油圧源を持つFBプレスを使用すれば、絞りと外形・穴抜き、ハーフ抜きと外形・穴抜きを同時に行うことができます。しかしながら、3動のFB加工では複数の加工がほぼ同時に行われるため厳密な意味では縦順送加工とは呼べません。FB本体の油圧源に第4、第5の圧力源を付加することによって、FB縦順送加工が可能となります。

ギヤ、スターター
3動のFBで、絞りと外形、軽量穴、インボリュートスプライン穴を1工程加工したギヤ 材質S45C 板厚4.5mm
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ギヤプレート(100歯)
一般プレスで加工したブランクにハーフ抜きギヤ、ハーフ抜きセンターボス、センター穴抜き、3-丸穴、3-異形穴をFB縦順送で加工した事例
さらに、FB縦順送加工を単独で使うだけでなく、順送加工と組み合わせることでより複雑な形状のFB部品加工が可能となります。
FB縦順送と順送を組み合わせた加工事例

4,FB縦順送加工の代表的事例:タウメル式シートリクライニングアジャスター用ギヤプレート
FB縦順送で加工される代表的な部品は、タウメル式のシート、リクライニングアジャスタ―用ギヤプレート(以後タウメルギヤプレート)です。ここからは、タウメルギヤプレートのFB加工を例に取り上げて、FB縦順送加工について説明していきます。
タウメル式シート、リクライニングアジャスタ―の概要
■特徴
タウメルギヤは、カイパーレカロ社の発明したシートリクライニング機構に使用されています。シートの角度調整をスムーズかつ無段階に行うためのギヤ機構で、通常のラチェット式リクライニング機構とは異なり、無段階の角度調整が可能です。
■歴史
1967年カイパー社はタウメル機構を開発し特許を取得
1969年カイパー社はレカロ社を吸収合併しカイパーレカロとなる
1973年にタウメル機構を使用したシートを発表
1980年頃、㈱今仙電機製作所、シロキ金属工業㈱(現、アイシンシロキ㈱)などが、カイパーレカロ社と技術提携を行い、タウメルギヤを使ったリクライニングシートアジャスターの生産を開始した
■普及状況
ヨーロッパでは、シートのリクライニング角度が無段階に調整できる、さらにインナギ ヤとアウタギヤが常時かみ合っているので走行中でも安全に角度調整ができることが評価され、高級車やスポーツカーで早くから採用が進みました。
一方、日本では、以下の課題があり、導入当初は普及が進みませんでした。
- シート角度調整に時間がかかる
- インナギヤ、アウタギヤの真円度やセンター穴との同芯度が悪いと作動力にバラツキが出る
- 未着座シートにガタ音が出る
しかし、パワーシートの普及とともに、1985年ころよりタウメル式シート、リクライニングアジャスタ―の採用がひろがっていきました。
■構成部品
ハーフ抜きされた29歯(インナギヤ)、30歯(アウタギヤ)のプレートと偏芯シャフトで構成されています。 29歯・30歯プレートのほとんどは、FBで製作されています。



FB加工された29T、30Tタウメルギヤプレート タウメルギヤリクラー構成図 (引用先:特許公報2008531391A)
■要求精度
- ハーフ抜きギヤの真円度
- ハーフ抜きギヤと偏芯シャフト穴の同軸度
- ハーフに抜きギヤの噛合い長さ
- ハーフ抜きギヤの抜け強度
- ハーフ抜きギヤの面粗さ
タウメルギヤプレートの要求精度を確保するため、ハーフ抜きギヤ・偏芯シャフト穴・外周は、FBで同時加工します。ハーフ抜きギヤは、抜け強度の確保、ギヤのせん断面確保、ギヤのダレを減らす目的で、負のクリアランスで加工されます。

参照:対向ダイスせん断法 ププレス技術第36巻第6号(1998年5月号)P24名古屋大学 近藤一義、広田健治
■改良例
タウメルギヤプレートは単純なハーフ抜きから軽量化・強度アップ・作動性向上などの目的で、さまざまな改良が加えられてきました。


ハーフ抜き部のリブ追加例(強度アップ、軽量化) ウレタン挿入溝追加例 (異音対策)


センター穴バーリング センター穴テーパー(ガタ対策)

ハーフ抜き面絞り
■タウメル機構を使わない無段階調整クライニングアジャスター
タウメルギヤ機構を使用しない代表的な無段階調整シートリクライニングアジャスターとして、IHW式シートリクライニングアジャスターが挙げられます。このアジャスターを構成する サンギヤ、プラネタリギヤ、21歯ギヤプレート、25歯ギヤプレート、クルスフォーム は、いずれも FBやFB縦順送加工 によって製造されます。

IHW式シートリクラーASSYと単品部品
〈後編へ続く〉
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- 2026年7月8日ブログファインブランキング縦順送加工とは(前編)
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