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ファインブランキング加工とは?仕組みからメリット・デメリット、導入・金型製作のポイントまで

ファインブランキングは、被加工材に上下からの圧力をかけて金属の塑性変形能を高めることで、高精度なプレス加工を行う工法です。通称「FB(エフビー)」とも呼ばれ、切削加工並みの高精度品を大量に成型できる工法として注目されます。

ファインブランキングはさまざまな産業分野で使われていますが、とくに自動車部品の生産にはなくてはならない重要な生産技術の1つとなっています。

一方で、ファインブランキング加工と一般的なプレス加工との違いや、ファインブランキングの導入などについては不明な点が多く、導入を検討しきれない方も多いと思います。

そこでこの記事では、ファインブランキングについて仕組みからメリット・デメリット、導入のポイントまで詳しく説明します。

ファインブランキングとは?

ファインブランキングとは、「ファイン(精度の高い)」「ブランキング(打ち抜き)」加工の意味で、1920年代にスイス人のシース氏により開発されました。

高い圧縮応力場(断面面積あたりに作用する垂直方向の圧縮荷重が高くなる場合)では金属の塑性変形能が高まる「静水圧効果」を利用した塑性加工法であり、打ち抜き面はほぼ100%のせん断面となります。

 

ファインブランキングの仕組み:上下方向から被加工材を加圧し静水圧効果を得てせん断する

ファインブランキングでは、静水圧効果を得るためV型環状突起で被加工材を拘束し、上下から圧力を加えながら打ち抜きます。加工部位の近傍に集中的に圧力が加わることで静水圧効果が得られ、全面が平滑にせん断分離されるともに優れた平面度・直角度を得られる仕組みです。

 

ファインブランキングにおける金型の構造

ファインブランキング用の金型は、被加工材に加工力を加える主パンチとダイ、被加工材を拘束するための板押さえ(ストリッパ)、主パンチの反対側から圧力をかける逆板押さえ(エジェクター、カウンターパンチ)が主要部品となります。

V字型の環状突起が設けられた板押さえ(ストリッパ)で被加工材を拘束・加圧し、加工部位近傍の被加工材の塑性変形能を高めます。主パンチの反対側からは逆板押さえ(エジェクター、カウンターパンチ)が逆圧を加えて被加工材の湾曲を抑制します。ダイの刃先は面取りがされ、板厚の0.25~0.5%という極小なクリアランス(一般プレスの約10分の1)で打ち抜き面の亀裂を防ぎます。

 

ファインブランキング加工と一般的なプレス加工との違い

ファインブランキングと一般的なプレス加工との違いは、得られるせん断面と寸法精度です。一般的なプレス加工の本質は脆性破壊加工である一方、ファインブランキングは塑性加工となります。ファインブランキングでは、直角度に優れ平滑なほぼ100%のせん断面が得られるため、2次加工が不要な高精度・高品質部品となります。

ファインブランキングの加工精度・加工限界ファインブランキングの加工精度・加工限界

※一般的な事例を示しています。加工限界・精度を超えた加工事例も数多くあります。

 

ファインブランキングは100%のせん断面が得られる

一方、一般的なプレス加工では、何十トン何百トンといった力でパンチを上から押し当てることで、ダイに固定した被加工材をせん断しています。

その本質は脆性破壊であり、抜き打ち面の3分の1がせん断で、残りの3分の2は破断面となります。被加工材の3分の1はパンチが食い込んで切り込みとなり、残りの3分の2はプレスの加圧で引きちぎられるイメージです。こうした加工の仕組みが、プレス成型品にバリやダレが生まれる要因となっています。

このため一般プレス加工ではギヤ、カムなどの摺動部や板厚全面にわたり100分代の公差が適用される孔(あな)や外形状では、打ち抜き面をそのまま使用することができず、シェービング、ブローチ、リーマ、ミーリングなどの2次加工が必要となります。

一方のファインブランキングは、直角度に優れた平滑なほぼ100%のせん断面が得られるので、一般プレス加工で必要となる2次加工を省くことができます。

 

ファインブランキングのメリット・デメリット

条件によって異なりますが、ファインブランキング加工では10mm程度の板厚でもほぼ100%のせん断面が得られます。トータルコストを抑えながら高精度・高品質な製品を大量に生産できることもポイントです。

一方、専用の金型やプレス機が必要であり、イニシャルコストが高額なことがデメリットになります。以下に、ファインブランキングのメリットとデメリットを解説します。

 

ファインブランキングのメリット

ファインブランキングを用いるメリットを5つ解説します。

 1.高精度部品を大量に成型できる

ファインブランキングを採用することで切削加工並みのプレス部品加工が可能となります。直角度に優れた平滑なせん断面を得られるため、シェービングやミーリングといった2次加工を削減できるほか、加工限界が高いため製品外形状に近い位置や板厚以下の径の穴加工も可能です。

2.多様な材料への適用性

ファインブランキングでは、一般プレスのシェービング加工では対応の難しい板厚の難加工材にも対応可能です。ステンレス材や、特殊鋼、炭素鋼やハイテン材といった難加工材の加工も可能です。

 3.軽量化、コストダウンに有効

3動の油圧源を持つ高剛性のファインブランキングプレス機を使用し、ファインブランキング順送型で増肉、減肉、絞り、曲げをなどを含む複合成形加工が可能です。立体的な形状を持つファインブランキング複合成形部品は完成品の軽量化や部品の1体化によるコストダウンに有効です。

ファインブランキングの複合成形加工の基本パターンファインブランキングの複合成形加工の基本パターン

FB+板鍛造の増厚事例(軽量化、材料費削減) ファインブランキング板鍛造の増厚事例(軽量化、材料費削減)

 

4.単発型で複数の加工ができる

縦順送例 縦順送例

3動の剛性の高いファインブランキングプレス機と専用金型を用いることで、1工程で複数の加工が可能です。ファインブランキングでは単発型で外抜、ピアス、エンボス、絞り、刻印などの加工ができるため、ピッチ精度・同芯度の良い部品が加工できます。

順送型に必要なアワーグラスやパイロットが不要になり、材料歩留まりも向上します。また、ファインブランキング順送型では一般プレスの順送型に比べステージ数が少なくて済むため、ピッチエラーを最小に抑えることができます。

3動のファインブランキングプレスに補助油圧を追加することにより縦順送加工が可能となり同芯度の良い多段押し出し加工も可能です。

 

5.ファインブランキング用のプレス機はSPMの向上が図られている

精密プレス機の性能が高まるのと比例して、ファインブランキング用のプレス機も性能の向上が求められ、とくにSPM(プレス加工スピード、1分間の作業数)の向上が図られています。そのためファインブランキング加工による経済合理性が高まっています。

 

ファインブランキングのデメリット

ファインブランキング導入時のデメリットを3つ解説します。

1.専用設備の高いイニシャルコストとランニングコスト

特殊な加工方法であるファインブランキングを採用する際は、専用のプレス機が必要となります。そのため、一般的なプレス加工と比べ高価な設備となりイニシャルコストがかかりやすい点がデメリットとなります。

油圧駆動のプレスのため消費電力が多い、作動油や油圧パッキンの定期交換が必要、構造が複雑でメンテナンスが難しい、加工に高価なFB加工専用潤滑油が必要など、ランニングコストでのデメリットもあります。

2.金型製作のコストが増える

トリプルアクションの金型機構であり、精度や剛性が求められるため、一般的なプレス金型と比べて製作コスト高額となります。また、パンチとダイのクリアランスが一般プレスの約10分の1と狭いため、金型への負担が大きくなり金型寿命が短くなりやすい点も挙げられます。

3.材料歩留まりが悪い

V字型の環状突起が設けられているため、一般プレスに比べ材料サン幅、送りピッチが広くなります(下図参照)。また材料によっては高価なファインブランキング専用材が必要となることもあります。

ファインブランキングに向いている製品例

ファインブランキングは、自動車をはじめ、精密機器、農業用機器、カメラなどの精密部品の製造に採用されています。ギヤ形状やカム形状を持ち、せん断面を必要とする精密部品などの製造に適しているためです。

複合的な成形部品が容易に加工できるほか、一般的なプレスでは加工の難しいステンレスや合金鋼、炭素鋼やハイテン材といった難加工材の加工も可能です。パワーシート用ギヤや自動車のシート部品、ダレなしセンサー部品、精密カム部品、ドアロックなどの製造に多く用いられています。

 

ファインブランキング用の金型製作事例

 

フランジ

フランジとは、パイプの接続部分やパーツの補強などに用いられる部品です。10,000kNtのファインブランキングプレス機を用いて打ち抜く、自動車用排気フランジのファインブランキング金型を製作しました。被加工材は、板厚9.0mmで、材質はSHPです。最終製品はバーリングによりセンター穴外周を高さ12.5mmに増厚し、外径・穴はほぼ100%平滑面にしたいとのオーダーでした。

 

ラチェットギヤ

一方向に動力を伝えて位置を固定するラチェットギヤの製造に、ファインブランキング金型を採用いただきました。被加工材は、板厚4.5 mmで、材質はSCMです。

ファインブランキング加工を用いることで歯切り加工が不要となり、外周・穴は100%平滑面が得られました。ギヤ部分の抜きダレは、逆シェービング加工により通常のファインブランキング加工のダレ量の3分の1以下に抑えることができました。

 

ファインブランキング導入のポイント

ファインブランキングには特殊な設備と技術を要するため、信頼と実績のあるメーカーに工法や金型製作を依頼することが重要です。

ファインブランキング金型の製作実績を確認する

ファインブランキングの金型設計・製作を外注する際は、製作例を確認し、信頼と実績のあるメーカーに依頼しましょう。とくに複合成型を行う際は、工法の検討と、高度な金型設計が必要となります。

工法から検証しトライ評価を行う

精密プレス加工ができるファインブランキングでも、バリやダレを完璧にゼロにすることはできません。工法から相談できる実績のある金型メーカーを探し、設計段階での評価やトライ評価を必ず行いましょう。

 

まとめ

ファインブランキングは高精度な抜き打ち加工が行える塑性加工の一種です。「静水圧効果」を利用することでほぼ100%のせん断面を得られ、切削加工並みの高精度品を大量に成型できる工法として注目されてきました。

ファインブランキングは当初は事務機用などの小物部品の加工に使用され被加工材も薄板の軟鋼板でした。1960年代から厚板の自動車用部品の加工に使用されるようになり被加工材は厚板の炭素鋼、合金鋼、ステンレス、ハイテン材と多岐に及んでいます。おもな自動車部品はフランジ、ATクラッチプレート、スプロケット、シートリクライナー、ブレーキパッド、ドアロックなどです。

近年ではファインブランキング加工と鍛造を組み合わせた複合成形により、鍛造・焼結・鋳造・切削などの加工をファインブランキングに転換することで、製造コストの削減や製品の強度向上、軽量化の向上といった効果を得られた例が数多く報告されてます。またファインブランキングプレス機の大型化や金型材料、金型表面処理の進歩により、産業用機械用の大型部品や難加工材のプレス加工などでも工法転換が進んでいます。

一方で一般的なプレスと比べて特殊な技術が必要、かつイニシャルコストがかかるため、ファインブランキングを採用する場合は信頼と実績のあるメーカーに相談し、その他の工法とよく比較検討しましょう。

 

不二工機製造(FS WORKS)のファインブランキング技術

不二工機製造(FS WORKS)では、1992年よりファインブランキング金型の生産を開始しました。ATミッション、ドアーロック、排気、シート、ステアリング、ブレーキなどの自動車関連部品を中心に、幅広い用途で使用されています。2023年までの累計で240型以上の製作実績があります。

いずれの型も社内設計標準および客先型仕様に準拠した合理的な設計となっております。高精度な工作機械で製作された金型部品は単品で精度確認を行っているので、現合調整のない高精度で再現性のよい金型を提供します。

ファインブランキングの採用をご検討の方は、お気軽にご相談ください。

不二工機製造株式会社(FSWORKS)のファインブランキング金型はこちら。

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